Liner notes

2012.6.9 Release

3rdAlbum「黎明」

 

黎明~ヒカリノサキヘ~
 

3rdアルバム黎明のタイトル曲。

 

物事や景色の新しい始まりの風景を黎明(れいめい)と言うようです。

 

 

 

"闇を切り裂いて 風をも貫くほどのパワー

全てはあなたの内側に 秘められた先天性"

 

 

西早稲田のとあるマンションの階下に古い桜の木がありまして。

冬の朝霧時。

枝と枝の隙間から、いかにも温かい、のびる光がありました。

たまたま、その場所に立っていました。

 

 

"生まれたての街で 朝焼けをジャックして 光の先へ"

 

 

この時、3rdアルバム制作の最中。

まだ選曲が出揃う前のことでした。

 

 

"誰もが皆 背中に釘を打たれ

それでも 死ねやしない"

 

 

余談ですが、宮本輝さんのある小説に。

誤って柱に釘で打ちつけられてしまったトカゲのギンちゃんと、主人公とのヒョンな生活を書いた作品がありました。

 

"誰もが皆、都会のトカゲなんだ!"

 

といったメッセージがあるかどうかは知らないけど、ニュアンス的にはそんなアプローチです。

多分、僕の書く世界観は基本的に、

 

「寂れた都会の片隅、地下に続く昭和のスナック街」

 

みたいな空気感です。

スタンダードは"陰気"です。

 

 

3rdアルバム黎明、はそんな陰気な空気が詰まったアルバム。

ただ、いつ聴いても色褪せない、というクリティカルを持ち合わせています。

何故なら、すでに古臭いからです。

時代を感じさせない、ってのもまたオツなもので。

そんな音を目指しています。

 

ちなみに。

このアルバムのベースは全曲僕が弾いたものになりますが、中でも黎明のベースは何故だか好評頂いてます。

それなりに存在感が出てると思います。

想~Soul~
 

イントロのカッティングやブレイクが印象的なソウルフルミュージック。

 

この頃、オリジナルラブが自主プロデュースでアルバムをリリース。

以前から曲調がオリジナルラブみたい、と言われていたので、これを機にしっかり聴いてみました。

 

お恥ずかしい話、CDも持っておらず、今までちゃんと聴いた事はありませんでした。

 

新譜のある曲にベースがやたらと熱い曲があり、ちょいゴリで丸っこい音が何ともクールで、

うなじ辺りがサッとざわめき立ちました。

 

 

「クールでホットな曲、いいなぁ。」

 

 

僕に出来るのはカッティングくらいなので、カチカチなカッティング曲を一発、と思い書きました。

何十テイク録ったかわからないくらい弾き直しました。

 

 

無音の美学。

引き算のクールさ。

呼吸を感じるブレイク。

 

そして、ソウル。

 

 

ギターソロ前にベースソロがあります。

個人的に凄く好きなベースです。

実はKeyミッキーさんがピアノを被せてくれましたが、ベースを引き立てるために、あえてそれを8小節後ろへ移しました。

ギターソロも僕が弾いたにしてはクールで良い具合に収まった感じがします。

そして、アウトロの多重コーラスは、ソウルです。

 

 

"夜明けを待つ星の静けさ

ベージュの涙は It's my soul"

 

 

歌詞は、アダルトな女性の目線で書きました。

物静かな世界に、そっと秘める熱い想い。

 

"その頬をつたうベージュのマスカラに溶ける煩悩"

 

 

エロく、唄わせて頂いております。

 
アンドロメダの旅人

「僕は今、透明になった手を見つめながら、少し肩を落とした

君は今、やぶれた現実を泣きながら、それでも繋ぎ合わせ様とした」

 

この曲のテーマは、"愛と、死"です。

アンドロメダの神話もまた悲しい物語です。

 

 

沢山ある星から何故、アンドロメダを選んだのか。

この訳が、実にくだらなくて申し上げにくいのですが。

 

 

聖闘士星矢、って知ってますか?

 

 

そう、ペガサス流星拳のアレです。

 

東京に出て来て、誰も知らない街で、ひとり。

動画サイトがお友だち。

懐かしいアニメを探っていたら、行き着きまして。

思わず、全シリーズ見てしまった。

シナリオの展開がいつも一緒で。

そんなことに気がつくとは。

 

大人になると損もします。

 

そのアニメの中にアンドロメダのキャラクターがいらっしゃる。

ネビラチェーン、ネビラストームなどという必殺技を持ち、チェーン一つで敵に挑む。

まさにスケ番デカ的な女子力高い美男子。

 

 

その後。

区の図書館で、たまたま星座の本を手にしました。

帰ってからも星座について結構調べましたなぁ。

 

「アンドロメダが街に降る度に 僕のこと思い出して欲しいのさ

今はカシオペアの砂漠を一人きり ふたこぶのラクダに揺られながら」

 

 

 

ギター、ベースはシラッシーさんにお願いしました。

キーボードはミッキーさん。

 

アンドロメダの旅人、という曲に対して。

当たり前ですが、自分とは違う感じ方を持ち。

新鮮なアプローチで投げてくれて。

そのプレイを僕が組み立て、新しく命を吹き込む。

そんな一連の流れを、初めて取り入れた曲。

 

 

書き下ろしてから、数年。

 

ようやく人前に出られたこの曲には、やはり深い深い思い入れがあります。

 
JOURNEY

この年は沢山旅をしました。

 

リリースもあり、先輩たちの影響もあり、東京、名古屋、関西を行ったり来たり。

 

レコーディングを開始して、少しした頃。

先輩であり、仲良しのブラザー、野辺剛正さんと行きつけの居酒屋でお茶会をしよう、となりました。

二人ともお酒がすこぶる弱いので居酒屋では勿論、ウーロン茶と三ツ矢サイダー。

 

ちなみにこの日からこの居酒屋は、"呑めない僕の行きつけの店"になりました。

 

 

橋本:

「丁度、居酒屋に来る直前に一曲書けたんですが、アルバムに入れるかどうか迷っていて。」

 

野辺:

「おー良いじゃん。とりあえず書いてみたらいいじゃん。」

 

橋本:

「このタイミングで出来たのも何かの縁ですかね。帰ったら書いてみようかな。」

 

野辺:

「良いね良いね、書いたら良いよ〜、そんなもんだよ〜、なははは。」

 

 

酔えない二人の、たわいも無い居酒屋でのトーク。

僕の迷いは少しずつ何故か晴れて。

晴れ晴れした気持ちで帰宅。

 

その後、一晩で書き下ろしたのがJOURNEYです。

 

 

 

野辺さんも旅人で、大阪、四国と飛び回ってました。

先輩がこんなに走り回って頑張ってるんだもんなぁ、と話を聞く度に励みになっていました。

 

そんな先輩であり友であり、ブラザーである野辺さんへの応援ソングがJOURNEY。

 

 

「躓いても良いんじゃない? 明日は逃げたりしない

君は君で良いんじゃない? まだまだこれからじゃない  いつか‥」

 

 

 

僕自身も何度も励まされた曲です。

 
Lady Bird

黎明のモチーフになった明け方の西早稲田へ向かう副都心線。

 

終電間際。

 

最寄り駅のプラットフォームはガランとしていて、「ここは地下です」と言わんばかりの静かな空気が立ち込めていました。

しばらくして、池袋行きが到着しました。

ホームから車窓を眺めると、人はまばら。

無意識に座った僕を乗せて、鬱々とした溜息を吐くように、「とりあえず、ラスイチ…行っときますかっ」と言った感じで電車は動き始めました。

 

すれ違う車窓に沢山の疲れた人の姿。

 

「皆、お疲れ様」

 

と思いながらも、自分が逆行しているのを実感し、少し寂しくなりました。

 

 

話はかわりますが。

LadyBirdとは、鳥女ではありません。

 

和訳すると、てんとう虫のことです。

漢字だと、天道虫、と書きます。

字の通り、天(太陽)に向かって飛び続ける、と言われているそうです。

 

そんな訳でこの曲は、鳥女と天道虫をコラボさせた歌詞に仕上がりました。

 

ライト兄弟も、とり人間コンテストも円広志も。

人間皆、一度は羽ばたいてみたい、と思いますよね。

 
IF

ブラザーチップ時代に、夜明け前、というバラード曲を書きました。

その曲が素材になり、東京生活の中で生まれたのが、IFです。

 

 

当時、マリーナ・ショウが大好きで、彼女のアルバムを聴き倒していました。

ある曲を聴いて、ピンと来ました。

こんな感じのバラードが欲しい、そう思い書きました。

 

歌詞は色々と悩みましたが、マリーナと同じくラブバラードに。

ただ、僕はハッピーな展開は好きじゃないから、やはり自分らしくグレーゾーンに落としちゃいました。

ラブはラブでも、悲しみの中にもラブはあります。

 

悲しみの川底にも光る砂金のようなものが、あるとかないとか。

太宰治さんが仰っていました。

また余談ですが、深津絵里さんの涙は究極の美です。

 

 

ライブアレンジについて。

 

当時、キーボードのミッキーさんとパーカッションの森芳樹さんのトリオでライブをしてました。

リハで何度もアレンジして、悪戦苦闘してました。

キメの部分を何度となくリアレンジ。

どうしても弾けない自分が情けなく感じたこともありました。

 

ただ、この時の鍛錬が現在の僕のカッティングへと繋がるわけです。

二人には本当に感謝してます。

 

 

音源としては、ピアノとギター、コーラスのみで収録されています。

コーラスのアレンジを色々と模索した曲でもあります。

 

いつか、バンドアレンジで再収録したいな、と思ってます。

 
ジオラマチ

渋谷のスクランブル交差点。

あっちへこっちへとソッポ向いてる複数の信号が切り替わる。

初めて渡る。

 

"真っ直ぐって、どっちよ!"

 

などと、田舎者のプライドが心の奥を突つく。

 

渋谷という街を好きになれず。

というか、知ろうとしない自分がいました。

人混みが得意じゃないのも理由にありました。

東京生活も数年経ち、名古屋よりも長いこと居ますが。

目的地以外には目を向けない性格なので、やはり都会に憧れる田舎者の性格は変わらず。

 

 

ジオラマチ=ジオラマの街

 

 

僕の二つ目にうつった渋谷はこんな街でした。

 

 

「砂漠の砂嵐のようだ、北と南はどっちだ?」

 

 

ガラケーからi-Phoneに切り替えた理由。

コンパスが付いていると聞いたから。

 

東京の街は方角がわからん!

 

家々が近いし、道幅も狭い。

ビルも沢山。

何度となく道に迷いました。

本当、不思議な街です。

綺麗な夕暮れを辿っても、家に帰れない。

それなのに、綺麗過ぎる夕暮れが田舎者の郷愁を誘う。

東京でチャレンジするってのは、住むだけで大変な事です。

 

 

アレンジについて。

 

打ち込みのリズムトラックの制作は実に楽しかった。

頭のリズムトラックの音色はオリジナル。

リムショットの音やメトロノームの音にディストーションやディレイをかけたり、色々こだわりました。

二度と再現出来ないです。

 

 

ライブでも、バンドでやる時にはキメキメでカチカチ。

凄い燃えてきます。

特に間奏のリズムアレンジは、山下達郎さんをマネてみました。

 

 

個人的にも演奏がグルーヴィーで大変楽しいし、こだわりの一曲になりました。

 
Rainy Day , Refrain

東京に出て一年目に書きました。

 

スティーブン・ビショップのような、フワッとした感じのアコースティックなAOR。

 

イントロのピアノフレーズはビショップのある曲の影響。

ミッキーさんに、このフレーズは活かしで!と依頼しました。

デモはギターで弾いていたんですが、フワッと感が出ないため、ピアノで。

オープンコードも心地良い感じです。

ちなみに、キーはデモよりも半音低くしました。

 

 

雨の日に、洗濯物をカーテンレールに今も良く干します。

柔軟剤の香りが部屋に漂います。

 

 

「Rainy Day,Refrain キミはカーテンレールに掛けられた洗濯物のよう

Rainy Day,Refrain この部屋を僕の想いで湿らせる」

 

 

悲しみの山を一つ越えた、その少し先の景色。

 

 

気分としては、そんなイメージ。

雨が降る度に、良くも悪くもどこかで思い出してしまうわけです。

ただ、リフレインする事で、見えてくるものもあります。

 

 

「Rainy Day,Refrain キミは閉め忘れた心に吹く、すきま風」

 

 

鍵をかっておきましょう。

 
明日に向かって

東北の震災がありました。

 

町の青年部の皆さんが立ち上がり、復興にいち早く取り組む姿をネットで知りました。

僕の周りのミュージシャンの中にも、いち早くチャリティーライブをしたり、現地に駆けつけてボランティアしたり。

僕は何も出来ませんでした。

募金箱を見かける度に、財布から僅かばかりの気持ちを寄付するくらいで。

 

悩み、ある日、苦手だったピアノへ、たち向かうことを決めました。

色々と克服するには、努力が必要です。

僕の努力なんかより、復興のために頑張る方々のが比べものにならないくらい大変だろうけど。

ただただ僕も、負けじと頑張りたい、と思いました。

 

"僕は僕のステージで、頑張ろう"

 

そう思いました。

 

そんな中、覚束ない手探りな状況下でピアノ曲を書きました。

人生初のピアノ曲。

それが、明日に向かって、です。

 

 

You can make it

 

 

この言葉は、自分へのエールでもあります。

また、被災地の方々へ向けての僕からのエールでもあります。

 

 

歌詞の一節にあります"ラ・マンチャ"、すなわち皆さんご存知の"ドン・キホーテ"ですが。

僕が大好きな人なので、ご登場頂きました。

 

不器用なのに、ハチャメチャなのに、愛せるキャラクター。

ひた向きな姿が、何より胸を打つ。

自然と人が集まり、知らず知らずに動かされる。

 

 

この曲を通して、伝えたい事ってのは、そういう事なんです。

僕の理想とする生き方です。

 

 

明日に向かって、全てはきっとココから。

橋本康史 Official site